イノベーティブな事業展開に向け、日常業務の改善をデータサイエンスで支援
2022年~2023年
兼松株式会社は、電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空などの幅広い分野で事業を展開する総合商社です。1889年の創業以来、日本のみならず世界各地で事業を展開し、グローバル企業として歩みを進めてきました。
新規事業創造に向けて既存業務の効率化が課題に
中期経営計画にて「先進技術を軸とした新規事業の推進と拡大」を重点施策とするなど、事業創造をいっそう積極化している同社では、既存事業に加えてイノベーティブなプロジェクトを進めるための業務効率化が喫緊の課題でした。
そこで同社が注目したのは、意思決定プロセスです。2020年には決裁申請の電子化システム「HI-MAWARI」を導入し、稟議フローのデジタル化(=デジタイゼーション・デジタライゼーション)を確立しました。しかし、業務効率化による組織全体の生産性向上や付加価値の拡大といった経営課題の解決にはあと一歩届かず、次の打ち手を模索している状況でした。
データ分析により生産性向上のボトルネックを探索
ご相談を受けて日本データ取引所が取り組んだのは、生産性向上のボトルネックとなっている業務フローの特定です。「HI-MAWARI」に蓄積された膨大なデータを、自然言語処理などのデータサイエンス技術を用いて分析しました。
老舗総合商社として、グローバルな大規模プロジェクトはもちろんのこと、地域に根づく商店との取引にも取り組み続けてきた同社では、稟議・決裁の対象となる案件の予算規模やパートナー候補の企業規模もさまざまであり、一律の基準では業務効率の高さや改善必要性を評価できないという難しさがありました。
そこで当社は、多種多様な稟議をその種別ごとに整理。定型業務と非定型業務、既存業務と新規事業などさまざまな切り口で、全社組織の意思決定状況を可視化しました。
その結果、フローの定型化が可能であるにもかかわらず都度の判断に任されている業務が特定されたほか、稟議の閾値設定に改善可能性を見いだせる稟議種別や、各メンバーの裁量をより明確に定義することで生産性向上が見込める領域が発見されました。
イノベーションに向けた業務改善のヒントを発見
さらに、新規事業の推進状況に照らし、それに関連する稟議件数が少ないという傾向も明らかになりました。この背景には、不確定事項が多い新規プロジェクトの初期段階では、取り組み内容を稟議に通す機会が限られるという事情があると推測されます。
このように、分析を通して稟議にかかわるデータの流れを可視化することで、日々蓄積されていくデータへの理解を深め、イノベーションの達成を得るための洞察を得ることができました。